※はじめましての方は『※はじめに』をご一読下さいませ(心の自己防衛)
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『このやりとりこそ、ふたりらしい二人で、ふたりの証だ』
別離とそして出会いの春に捧ぐ、一つの旅立ちの話。
ふたつのおわりを経て、再び重なるしあわせ。
ひとつの幸せのかたち。
※遣隋使(妹太)
※偽造ネタ。死を匂わせる表現有
以上が許せる方。
続きを~よりどうぞ。
別離とそして出会いの春に捧ぐ、一つの旅立ちの話。
ふたつのおわりを経て、再び重なるしあわせ。
ひとつの幸せのかたち。
※遣隋使(妹太)
※偽造ネタ。死を匂わせる表現有
以上が許せる方。
続きを~よりどうぞ。
++++++++++
時を経た今だからこそ見えてくるものがある。
当たり前という定義に押し込んでいた日々がどれだけ尊く幸せであったか、だとか。
ゆびさきとゆびさきが触れる。
ただそれだけのことの、なんと愛おしい事だろう。
【しあわせのあとさき】
寝床に入り数刻、夢と現を彷徨うこと数回。
五度目の覚醒とともに、妹子はその来訪者に気がついた。
仰向けに横たわる妹子の枕元に、奇妙に崩した正座でちょこんと座っていた人物。
その人物が居たことにはひどく驚いたものの、何故、という疑問は不思議と浮かばなかった。
「…………」
震える指先を考えなしにそろりと伸ばせば、薬指が彼の右手小指のてっぺんにぶつかった。
恐る恐る指先でするすると小指の甘皮を撫でてみる。
ささくれがちな指先。
視線でなぞったその先には、小さな傷の目立つ彼のゆびさき。
…こうして見ると、彼は本当に皇族らしからぬ手をしているのだなぁと今更に思う。
自然との戯れが好きで、何でもやたらとその手で触れたがる人だった。
それ故の怪我なんてしょっちゅうで、本当に一体何度それを注意したことか。
(ああ、やたらと生傷の多い人だったな。体にも、心にも)
器用に、不器用。
喜びも痛みも悲しみも慈しみも、その両の手で触れようとしていた。
武人の様な滲み出る屈強さや厳かな強さはないが、優しい彼の芯ある強さの歴史が確かにそこに手にあった。
彼の手のひら。
倭国を民を愛し抜いた、敬うべき手のひら。
そして今。
そんな彼の指先が、新たな約束を結ぶにはもう随分年を取りすぎたこの指先をくるりと絡めとった。
「…あんまり見るなよ。穴があいちゃうだろ?」
「あいたらさぞ、面白いでしょうね」
「お前……ああ、お前ってそういう奴だよな…!この毒干し芋野郎め!」
「誰が干し芋ですかこの犬好きカレー男が…」
「わんちゃん好きで何が悪い!」
締め付けられるような慕情を感じながらも、とっさに言葉が出た言葉はいつもの憎まれ口だった。
何という代り映えのないやりとり。
しばらくの間のあと、ははははと互いに顔を見合わせて笑ってしまった。
(ああこれは仕方ないというかもう、必然なんだな)
このやりとりこそ、ふたりらしい二人で、ふたりの証だ。
きっとお互いにそれを一番わかっている。
それを妹子は、切ないくらいに幸せに思う。
「わざわざ、来てくれたんですか。太子」
「…まあな。もう特別の特別で特殊な特例だぞ?ありがたく思え。特盛で有り難がれ!」
「特特うるさい聖徳太子ですね…特異体質にも程がありますよ」
「なにおぅ!私の単行じゃないぞ?」
「………そう、ですよね」
「うん。あのな…」
声の雰囲気をやわらかいものに変えて、太子がくしゃりと笑う。
「お前と私が頑張ったから、だから、ご褒美なんだってさ」
「……そうですか」
それはどなたからの言付けですか、なんて野暮なことは聞かない。
けれど、喜びとも安堵とも似たどうしようもない気持ちを伝える術が言葉ではみつからなくて。
ただただ指先に力をこめた。
「妹子?」
「太子」
「………うん」
少し困ったような、泣きそうな声で笑いかけてくるかっての主君を、目を細めて見つめた。
ゆびさきとゆびさきが触れる。
ああ。
ただそれだけのことの、なんと愛おしい事だろう。
ふわり、立ち上がる。
残された微かな温度を脱ぎ捨てて。
絡まったままの小指の先に、二人で走り抜けたいつかの日々がみえた様な気がした。
END
++++++++++
きっちり人生のお勤めを果たした妹子。
そして、お迎え太子。
無論、某冥府の誰かさんの粋な計らいです(ええ趣味ですとも)
せめて二人の最後の走馬灯は、お互いの面白おかしい濃ゆい思い出だったらいい。微笑んだまま旅立てるような。
このふたりは本当にもう全力で幸せにしたくなる…!
終わりと始まりの春に、二人に愛を込めて。
H21.3 べに釦
時を経た今だからこそ見えてくるものがある。
当たり前という定義に押し込んでいた日々がどれだけ尊く幸せであったか、だとか。
ゆびさきとゆびさきが触れる。
ただそれだけのことの、なんと愛おしい事だろう。
【しあわせのあとさき】
寝床に入り数刻、夢と現を彷徨うこと数回。
五度目の覚醒とともに、妹子はその来訪者に気がついた。
仰向けに横たわる妹子の枕元に、奇妙に崩した正座でちょこんと座っていた人物。
その人物が居たことにはひどく驚いたものの、何故、という疑問は不思議と浮かばなかった。
「…………」
震える指先を考えなしにそろりと伸ばせば、薬指が彼の右手小指のてっぺんにぶつかった。
恐る恐る指先でするすると小指の甘皮を撫でてみる。
ささくれがちな指先。
視線でなぞったその先には、小さな傷の目立つ彼のゆびさき。
…こうして見ると、彼は本当に皇族らしからぬ手をしているのだなぁと今更に思う。
自然との戯れが好きで、何でもやたらとその手で触れたがる人だった。
それ故の怪我なんてしょっちゅうで、本当に一体何度それを注意したことか。
(ああ、やたらと生傷の多い人だったな。体にも、心にも)
器用に、不器用。
喜びも痛みも悲しみも慈しみも、その両の手で触れようとしていた。
武人の様な滲み出る屈強さや厳かな強さはないが、優しい彼の芯ある強さの歴史が確かにそこに手にあった。
彼の手のひら。
倭国を民を愛し抜いた、敬うべき手のひら。
そして今。
そんな彼の指先が、新たな約束を結ぶにはもう随分年を取りすぎたこの指先をくるりと絡めとった。
「…あんまり見るなよ。穴があいちゃうだろ?」
「あいたらさぞ、面白いでしょうね」
「お前……ああ、お前ってそういう奴だよな…!この毒干し芋野郎め!」
「誰が干し芋ですかこの犬好きカレー男が…」
「わんちゃん好きで何が悪い!」
締め付けられるような慕情を感じながらも、とっさに言葉が出た言葉はいつもの憎まれ口だった。
何という代り映えのないやりとり。
しばらくの間のあと、ははははと互いに顔を見合わせて笑ってしまった。
(ああこれは仕方ないというかもう、必然なんだな)
このやりとりこそ、ふたりらしい二人で、ふたりの証だ。
きっとお互いにそれを一番わかっている。
それを妹子は、切ないくらいに幸せに思う。
「わざわざ、来てくれたんですか。太子」
「…まあな。もう特別の特別で特殊な特例だぞ?ありがたく思え。特盛で有り難がれ!」
「特特うるさい聖徳太子ですね…特異体質にも程がありますよ」
「なにおぅ!私の単行じゃないぞ?」
「………そう、ですよね」
「うん。あのな…」
声の雰囲気をやわらかいものに変えて、太子がくしゃりと笑う。
「お前と私が頑張ったから、だから、ご褒美なんだってさ」
「……そうですか」
それはどなたからの言付けですか、なんて野暮なことは聞かない。
けれど、喜びとも安堵とも似たどうしようもない気持ちを伝える術が言葉ではみつからなくて。
ただただ指先に力をこめた。
「妹子?」
「太子」
「………うん」
少し困ったような、泣きそうな声で笑いかけてくるかっての主君を、目を細めて見つめた。
ゆびさきとゆびさきが触れる。
ああ。
ただそれだけのことの、なんと愛おしい事だろう。
ふわり、立ち上がる。
残された微かな温度を脱ぎ捨てて。
絡まったままの小指の先に、二人で走り抜けたいつかの日々がみえた様な気がした。
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きっちり人生のお勤めを果たした妹子。
そして、お迎え太子。
無論、某冥府の誰かさんの粋な計らいです(ええ趣味ですとも)
せめて二人の最後の走馬灯は、お互いの面白おかしい濃ゆい思い出だったらいい。微笑んだまま旅立てるような。
このふたりは本当にもう全力で幸せにしたくなる…!
終わりと始まりの春に、二人に愛を込めて。
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名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日
・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電
さらに濃ゆい版の詳細は※
こちら←
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