※はじめましての方は『※はじめに』をご一読下さいませ(心の自己防衛)
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『ああ、何と奇妙な循環か』
思いやりは、無意識に息づいて誰かへと生き着いていく。
※数日遅れながら海の日ネタ
※勝手な過去設定有
※なんだか甘蕎麦!
※むしろ甘曽良
以上、平気だぜ!な方。
続きを~よりからどうぞ。
++++++++++++++
思いやりは、無意識に息づいて誰かへと生き着いていく。
※数日遅れながら海の日ネタ
※勝手な過去設定有
※なんだか甘蕎麦!
※むしろ甘曽良
以上、平気だぜ!な方。
続きを~よりからどうぞ。
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【回帰する海】
りん、と遠くに聞こえたのは風鈴の音。
その涼やかな音色に手招かれるように、ゆるやかに曽良の意識は夢うつつから引き戻された。
どうやら、宿の縁側で夕涼みをしているうちに眠ってしまっていたらしい。
不覚だ、と瞼をとじたままぎゅうと眉間に皺を寄せた。
瞼越しに感じる光はまだ明るい。
どうやらそう時は経っていないようだが、と思案しているとふいに何者かの指先が曽良の額にそうっと触れた。
(まあ…何者かといっても、寝ている自分に気安く触れてくるような人物など、考えるまでもなく一人しかいないけれど)
「曽良君ってば全く…寝てる時まで難しい顔しちゃって」
ひどく柔らかな手付き、くすくすと零れる笑い声。
旅人のてのひらにしては頼りない、けれど一度筆を持てば美しくも力強い詩を生み出す最強の指先が、曽良の眉間をゆるやかに撫でる。
「……芭蕉さん」
「あ、起こしちゃった?」
「いえ………」
瞼を押し上げれば、そこにいるのはやはり己の師である松尾芭蕉だった。
(…それはまあ、いい)
けれどその声の聞こえる位置というか。
覗き込まれているというこの現状は全くの予想外だった。
「……何ですか、この状況は」
「何って、膝枕だけど?」
座ったままじゃ寝苦しそうだったから、とにへらと笑う。
一体、いつの間に。
再度過ぎった『不覚』の二文字に、思わず曽良は舌打ちをした。
「なんでそこで舌打ちなの?!」
びくりと怯える師に、年寄りの膝枕も寝心地はそう変わりませんよと淡々と言葉を返す。
それを聞いて蛸のように口を尖らせた様子に、曽良の中の荒れた感情が少しだけ和らいだ。
(歪んでいる?今更だ)
生憎と曽良は、ご機嫌取りなどという今更な技術を彼に対して持ち合わせてはいない。
「可愛くないなぁ!!」
「男弟子に可愛さを求める方がおかしいです」
すっぱりと反論を切り捨てながら、身を起こそうと持ち上げた上体を、頭を抱えるようにして引き戻される。
何の真似ですか、と口を開く前にずいっと顔が接近した。
「…んもう!今の君は、神経質な君が私に気が付かなかったぐらい疲れてるんだよ?!つべこべ言わずに寝てなさい!」
至近距離で、目を見ながら。
それは彼が、真面目に誰かをたしなめる時に使うおきまりの体勢だ。
相変わらず威厳も何もあったものではない言い分だが、こちらを諭すような口調と少し強気な発言が珍しくて曽良は少しだけ目を見開いた。
「何です、芭蕉さんのくせに生意気な…」
「な、生意気って…松尾、一応君のお師匠様なんだけど?!」
「ああ、そうでしたっけ」
「きぃい…曽良君の鬼弟子っ…!!」
わめき立てる芭蕉の声に混じり、ちりりと風鈴が風に歌う。
賑やかと涼やかの二重奏は思いのほか耳に優しく、解け始めた茜日がやんわりと二人を照らす。
美しい、夏の夕暮れ。
「…全く…貴方の気紛れに付き合っていたら、日が暮れてしまうんですが」
俳人の心を打つ光景を塗り固めたかのようなこの空間に毒気を抜かれてしまい、断罪心が失せていく。
そんな曽良の気配を察したのか、騒ぐのをやめた芭蕉がふふふ、と笑う。
「いいじゃない、夏の夕暮れ。……太陽が燃え落ちて夜がくるんだ。綺麗だよね」
そっと曽良の頭を梳くのは、少しだけかさついた、それでも柔らかな指先。
朱に染まり、いつもより血色が良く見える細い指先。
(ああ、確かに綺麗だ)
彼が、年の割に綺麗な指先をしている理由を曽良は知っている。
何だかんだと良いながら、世話を焼かれ、甘やかされ、愛されて生きてきた人なのだ。
彼が本当に困った時はきっと…必ず誰かが、手を差し延べてきたのだろうと思う。
無論そればかりではないことも知ってはいるが……それでも彼は、そういう星の下に生まれてきた人なのだ。
それを曽良は、旅をする中で改めて思い知っていた。
(…むしろ、今では僕こそがその世話焼き筆頭なのだから、もう認めざるを得ないだけだが)
そんな芭蕉が、こうして曽良を甘やかそうとしている。
その矛盾。
全くもって、歪なことこの上ない。
「知ってたかい?今日は海の日なんだよ、曽良君」
「……そうですか、毎日暑い訳ですね」
「君は案外暑いのを嫌うものねぇ」
遠回しに夏バテしているんだろう、と馬鹿にされた気がして顔をしかめると『海の日なのに怖い顔しないで!』と眉間の皺を抑えつけられた。
「海の日だから笑えとまでは言わないけど、こういう時ぐらいは私に甘えてよ」
「……おっしゃられてることが支離滅裂ですよ。…嗚呼、馬鹿なんでしたっけ芭蕉さんは」
「馬鹿って君……あ、今笑った?!笑ったでしょ曽良君?」
「海の日なんでしょう?」
「…うん!!」
世話を焼き、甘やかし、慈しむ。
世話を焼かれ、甘やかされ、慈しまれる。
ああ、何と奇妙な循環か。
ふいに、遠い昔の残像が脳裏に過ぎた。
(…ああ、そういえば)
昔、まだ彼を見上げる背丈であった曽良に、彼が告げた馬鹿げた提案があった。
膝を貸してあげようか。
結構です。
甘やかすという行為が互いにあんまりにも不慣れであったし、不毛な行為にしか思えなかった曽良は当然のように断ったのだけれど。
「…ふふふ、念願達成できちゃったなぁ」
次は耳掻きとかいいよね。
まどろみの海で聞いたそんな戯言の根底に、あの頃をも上回る確かな想いがあるのならば。
今届けられたこの現実がまた巡ることを、自惚れても良いだろうか?
この海への回帰を。
願わくば来年も、また。
END
++++++++++++
循環する想い。
思いやりは、無意識に息づいて誰かへと生き着いていく。
それがお互いだったら、素敵だよね!
…みたいな話でした。
宅の蕎麦は割と甘いイメージです。
ある意味でどちらも互いに素直だからかな。
ちょっと終わりがほの暗くなりかけましたが、限りある刹那ゆえの切なさもまたエッセンスだとおもう。
(他のペアにも共通することですが)
…こんな蕎麦も、有りですかね…?(聞くなよ)
りん、と遠くに聞こえたのは風鈴の音。
その涼やかな音色に手招かれるように、ゆるやかに曽良の意識は夢うつつから引き戻された。
どうやら、宿の縁側で夕涼みをしているうちに眠ってしまっていたらしい。
不覚だ、と瞼をとじたままぎゅうと眉間に皺を寄せた。
瞼越しに感じる光はまだ明るい。
どうやらそう時は経っていないようだが、と思案しているとふいに何者かの指先が曽良の額にそうっと触れた。
(まあ…何者かといっても、寝ている自分に気安く触れてくるような人物など、考えるまでもなく一人しかいないけれど)
「曽良君ってば全く…寝てる時まで難しい顔しちゃって」
ひどく柔らかな手付き、くすくすと零れる笑い声。
旅人のてのひらにしては頼りない、けれど一度筆を持てば美しくも力強い詩を生み出す最強の指先が、曽良の眉間をゆるやかに撫でる。
「……芭蕉さん」
「あ、起こしちゃった?」
「いえ………」
瞼を押し上げれば、そこにいるのはやはり己の師である松尾芭蕉だった。
(…それはまあ、いい)
けれどその声の聞こえる位置というか。
覗き込まれているというこの現状は全くの予想外だった。
「……何ですか、この状況は」
「何って、膝枕だけど?」
座ったままじゃ寝苦しそうだったから、とにへらと笑う。
一体、いつの間に。
再度過ぎった『不覚』の二文字に、思わず曽良は舌打ちをした。
「なんでそこで舌打ちなの?!」
びくりと怯える師に、年寄りの膝枕も寝心地はそう変わりませんよと淡々と言葉を返す。
それを聞いて蛸のように口を尖らせた様子に、曽良の中の荒れた感情が少しだけ和らいだ。
(歪んでいる?今更だ)
生憎と曽良は、ご機嫌取りなどという今更な技術を彼に対して持ち合わせてはいない。
「可愛くないなぁ!!」
「男弟子に可愛さを求める方がおかしいです」
すっぱりと反論を切り捨てながら、身を起こそうと持ち上げた上体を、頭を抱えるようにして引き戻される。
何の真似ですか、と口を開く前にずいっと顔が接近した。
「…んもう!今の君は、神経質な君が私に気が付かなかったぐらい疲れてるんだよ?!つべこべ言わずに寝てなさい!」
至近距離で、目を見ながら。
それは彼が、真面目に誰かをたしなめる時に使うおきまりの体勢だ。
相変わらず威厳も何もあったものではない言い分だが、こちらを諭すような口調と少し強気な発言が珍しくて曽良は少しだけ目を見開いた。
「何です、芭蕉さんのくせに生意気な…」
「な、生意気って…松尾、一応君のお師匠様なんだけど?!」
「ああ、そうでしたっけ」
「きぃい…曽良君の鬼弟子っ…!!」
わめき立てる芭蕉の声に混じり、ちりりと風鈴が風に歌う。
賑やかと涼やかの二重奏は思いのほか耳に優しく、解け始めた茜日がやんわりと二人を照らす。
美しい、夏の夕暮れ。
「…全く…貴方の気紛れに付き合っていたら、日が暮れてしまうんですが」
俳人の心を打つ光景を塗り固めたかのようなこの空間に毒気を抜かれてしまい、断罪心が失せていく。
そんな曽良の気配を察したのか、騒ぐのをやめた芭蕉がふふふ、と笑う。
「いいじゃない、夏の夕暮れ。……太陽が燃え落ちて夜がくるんだ。綺麗だよね」
そっと曽良の頭を梳くのは、少しだけかさついた、それでも柔らかな指先。
朱に染まり、いつもより血色が良く見える細い指先。
(ああ、確かに綺麗だ)
彼が、年の割に綺麗な指先をしている理由を曽良は知っている。
何だかんだと良いながら、世話を焼かれ、甘やかされ、愛されて生きてきた人なのだ。
彼が本当に困った時はきっと…必ず誰かが、手を差し延べてきたのだろうと思う。
無論そればかりではないことも知ってはいるが……それでも彼は、そういう星の下に生まれてきた人なのだ。
それを曽良は、旅をする中で改めて思い知っていた。
(…むしろ、今では僕こそがその世話焼き筆頭なのだから、もう認めざるを得ないだけだが)
そんな芭蕉が、こうして曽良を甘やかそうとしている。
その矛盾。
全くもって、歪なことこの上ない。
「知ってたかい?今日は海の日なんだよ、曽良君」
「……そうですか、毎日暑い訳ですね」
「君は案外暑いのを嫌うものねぇ」
遠回しに夏バテしているんだろう、と馬鹿にされた気がして顔をしかめると『海の日なのに怖い顔しないで!』と眉間の皺を抑えつけられた。
「海の日だから笑えとまでは言わないけど、こういう時ぐらいは私に甘えてよ」
「……おっしゃられてることが支離滅裂ですよ。…嗚呼、馬鹿なんでしたっけ芭蕉さんは」
「馬鹿って君……あ、今笑った?!笑ったでしょ曽良君?」
「海の日なんでしょう?」
「…うん!!」
世話を焼き、甘やかし、慈しむ。
世話を焼かれ、甘やかされ、慈しまれる。
ああ、何と奇妙な循環か。
ふいに、遠い昔の残像が脳裏に過ぎた。
(…ああ、そういえば)
昔、まだ彼を見上げる背丈であった曽良に、彼が告げた馬鹿げた提案があった。
膝を貸してあげようか。
結構です。
甘やかすという行為が互いにあんまりにも不慣れであったし、不毛な行為にしか思えなかった曽良は当然のように断ったのだけれど。
「…ふふふ、念願達成できちゃったなぁ」
次は耳掻きとかいいよね。
まどろみの海で聞いたそんな戯言の根底に、あの頃をも上回る確かな想いがあるのならば。
今届けられたこの現実がまた巡ることを、自惚れても良いだろうか?
この海への回帰を。
願わくば来年も、また。
END
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循環する想い。
思いやりは、無意識に息づいて誰かへと生き着いていく。
それがお互いだったら、素敵だよね!
…みたいな話でした。
宅の蕎麦は割と甘いイメージです。
ある意味でどちらも互いに素直だからかな。
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自己紹介:
名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日
・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電
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