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※はじめましての方は『※はじめに』をご一読下さいませ(心の自己防衛)


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『未知を探り合って。道を辿り直すみたいに触れ合って』
『成程、点検とは言い得て妙だ』

※鬼閻
※甘いつもりだけどどうだろう
※バカップル


 続き~よりどうぞ。


++++++++++++++




 業務終了後の他愛もない雑談の中で。
 ふいに落ちた沈黙を埋めるかのように、落とされたぬるい温度。


 触れて、重ねられて、離れる。
 ほんの数秒。けれど決して一瞬ではないそれは、確かな意思をもって鬼男へと降りてきた。

 いわゆる、ちゅー。
 捻りも何もあったものではないが効果音で表すとまさしくそれだ。



【臨時点検入ります!】



「…どうしたんです、いきなり」
「や。少し気になったんで、再確認しただけ」
「は?確認?何の」
「…なぁんでもなーい」


(ああ…なんだろうか、この感情)

 抱いた感情はなかなか消えてくれない。
 ふふふー、なんてくすぐったそうに笑う閻魔のその緩んだ白い頬を鬼男は両側からぐにりと掴み上げた。


「ひょ、いひゃいよ!」
「手加減してます。……今、何を隠しやがったんだこのイカ野郎」
「別に何も隠してないよ!!い…良いじゃないか別に…っいひゃいって!」


 もごもごと言い淀むのがますます気に入らなくて、むいむいと摘んだままの頬をさらに強く引いた。


「……アンタの使う『別に』は、あまり好きじゃないです」


 いくらつきあいの長い間柄、とはいえ他者同士。
 別な個体同士なのだからわからないことがあるのは仕方ないとしても、それを知らなくていいよと突き放されるのはひどく気に入らない。

(何でもかんでも濁しやがって、僕をどこまで舐めてんだよ)


 下がった声のトーンから苛立ちの原因を察したのか、違うよ!違うってば!!と、伸ばされた頬のままでふがふがと訴えてくるので仕方なく解放してやる。
 ひどいなぁ、なんて言いながらしばし視線をさ迷わせた後、彼はようやく観念したかのように口を開いた。


「た、たださ………ちゅーしたら嫌がるかなぁ、って気になったんだよ」
「…嫌がられたいんですか?どんだけMなんだアンタ…」
「いやいやいや!それは激しい誤解だよ!!」


 まさかの自虐発言に、若干引きますと鬼男が告げる。引かんといて!としがみつきながら、閻魔はなにやら言葉を探しているようだった。

(自虐じゃないなら何だってんだ)


「うーん…ほら、何て言うかなぁ…ちゅーする特権の点検、というかさ…」


 そこで一度言葉を切ると、ふと真面目な光を宿した紅でこちらを見据える。


「君、嫌がらなかったじゃない?」
「そりゃ…当たり前でしょうが」


 今は勤務時間外で、人目もない。
 いつもの明らかな悪ふざけならともかく、条件の揃った場での他愛のないふれあいを拒む理由がどこにあるのか。
 自分達はそういう間柄、なのだし。


「うん、そう。…オレはそういう【当たり前】の有り難みを再確認、したかったんだよ」
「………はぁ…そう、ですか」


 実に漠然とした不明確な回答。
 だが、彼の言わんとしていることがなんとなく汲めてしまい鬼男は思わず目を伏せた。


(理解できるということは……思考レベルが、一緒なんだろうか)


 それは少し、不本意だ。
 そして妙に気恥ずかしい。

 ああでも確かに彼のいう通り。最近の自分達はあまり『それ』を意識できてはいなかった。


「…………」
「………?」

 しばらくすると、急に押し黙ったことを気にしてかどうかしたのかと怪訝そうに閻魔がこちらを覗き込んできた。

(そういえば、この距離でのこのアングルは久しぶりかもしれない)


 少し戸惑ったような色を宿しはじめた彼の、その頬に先程の彼がしたように唇を落とす。
 しばしの間。
 ぱちぱちと二回の瞬きの後、不思議そうに名を呼ばれた。


「鬼男君?」
「僕も、確認です」
「…何の?」
「…多分、アンタと一緒ですよ」
「ふぅん」


 だとしたら嬉しいんだけど、なんてくすくすと揺れる肩を引いて抱き込めば、特に拒むことなく、腕の中へと収まる。
 そんな他愛もない事が、今はこんなにもくすぐったくて仕方ない。


「………成程、点検とは言い得て妙だ」
「でしょう?」


 当たり前に受け入れられる幸せがこんなにもやわらかいことを。
 こうしてあなたの心と触れ合えなければ、知ることすらできなかったのだ。
 そんな有り難みを忘れそうに成るほどに、こんなにも自然に誰かの権利を許される。
 それはなんて贅沢で、欲張りなことだろう。


 少し早まった鼓動。
 未知を探り合って、道を辿り直すみたいに触れ合って。
 そうして終わりのない確かめ合いの日々は続く。


「…こういうのって臨時点検っていうのかな?」
「まあこれからは定期点検になりますけどね、きっと」
「………うっわぁ。なんか今更急に恥ずかしくなってきたんだけど!やっぱ逃げていい?!」
「逃がすかよこの乙女大王イカ!」



END


++++++++++++


 付き合って大分経った鬼閻。
 倦怠期に入る手前ぐらいな。ちょっとお互いに『当たり前』耐性がついちゃったよーみたいな。
 でも結局、倦怠期?なにそれみたいに回避。

 照れてときめき、感謝する。
 これぞバカップル!

H21.11
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HN:
べに釦
性別:
女性
自己紹介:
名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日

・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電

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