♥ 左胸が好きを叫ぶ（妹太／文）

『もう、とっくの昔に無くしたと思っていたのに』
『もどかしくも甘くジリジリ焼けていくような、橙色』

※妹太！
※…なのに妹子が空気
※甘酸っぱさに焦れっ太子
※日付無視（クリスマスルー）


以上が許せる方。
続きを～よりどうぞ。


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　きゅううと酸っぱくて、ぐずぐずと甘い。
　そんな、まるでレモンに砂糖をまぶしたようなかわいらしい、瑞瑞しい恋愛が似合うような歳じゃない。
　わかってる。
　そんな時期はとうの昔に通り過ぎて生きてきた。
　それはきっと、お互いに。


（例えば私なんて、それこそ、寝床ですら政の舞台になるような世界を子供の頃から知っているんだからさ）


　ああ、もうそれなのに。



（なのに……ああもうどうしちゃったんだ、私…！！）



　それなのに、二人をとりまくこの、何だかもどかしくも甘くジリジリ焼けていくような橙色の空気は何なの！
　そしてこの桃色のそわそわオーラ！！
（隋で出会ったバカップルだって、ここまでのオーラは出してなかったよ…！！）


　その事実が、複雑だけど少し嬉しくて、くすぐったくて。
　そしてそれ以上に恥ずかしいというか……うん、もう、限界。



「…どぅだぁあああ！！そ、そうだっ！賞味期限ギリギリっぽい崖っぷちなカレーを鍋に残しておいたの、忘れてたでおまっ！！私、帰るな！！帰るっ！！」
「はぁ？！ちょ……太子？！」


（やっぱり無理ー！！耐えられないでおま！！）


　やっぱり今日も奇声と怒声とを駆使し、太子は目の前の現実からあらん限りの全力疾走で逃げ出した。




【左胸が好きを叫ぶ】




「……うああ、この超素敵ミドルな摂政にあるまじきこの現実……なんなんだ…！！」


　息切れのままに叫ぶと、法隆寺の玄関前で体育座りになってしょんぼりうなだれる。
　ああ、またやってしまった。

　自分でも、いい加減に何とかしないとマズイよなぁ…とは思うのだ、切実に。


（だってさぁ…）


　いい年した大人が、恋仲になって一月以上も経ったというのに。


「……ちゅーひとつ、今だに出来てないでいるなんて、一体誰に言えるってんだ！！」


（いや…誰にも言わん！っていうか言えないけども！！）



　何が良くないかといえば、まず、タイミングだ。


　なんだか改まると、お互いがお互いに照れてしまってどうにも、ダメなのだ。
　途端ぐだくだになる。


　勿論太子も妹子もれっきとした男なのだから、時折、どちらかがぐっと強気に出てどうにか打破しようとする時だってある。
　あるのだけれども……そういう時は必ずもう一方のボルテージが、頑ななまでに真逆に向かうのだ。何故か。

　そして照れやらなにやらが伝染し……最終的にはいつもの掛け合い漫才になり、ひどいときには喧嘩になるのがおきまりのパターンだ。


　甘酸っぱいを通り越し、いっそもう、しょっぱい。


「…私、こんなにピュアネストだったのかぁ…」


　自分の感情でいっぱいいっぱいで、お互いに駆け引きもできないで、ぶつかるだけ。
　こんな真っ直ぐな気持ちなんて……もう、とっくの昔に無くしたと思っていたのに。


「恰好悪い……ああ、カッコわるぅいい私…！！」


　瑞瑞しい恋愛が似合うような歳じゃない。
　なのに、一人きりになっても、お前を思うだけで、きゅうと酸っぱくてぐずぐずと甘くなる胸のうち。
　たったひとつの特別な『好き』な交わしあいだけで、こんなにも一喜一憂して。
　みっともなく必死で格好悪いことこの上ない。



「…でも……私……妹子といる私、凄く…好きなんだよなぁ…」



　なあ、お前もそうだったりするのかな。


　脳裏に浮かんだのは、逃げだす前に見たあのはにかみ笑い。
　…ああまた、砂糖漬けにされたレモンが、ぎゅうぎゅうと好きを叫んでる。



ＥＮＤ




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　なんかクリスマスなの書きたいなー甘酸っぱい妹太にちゅーさせたいよー。

　……とか思いながら、会社のおやつにレモンピールかじっていたらふとコレが沸いて出ましたが。
　たぎったその勢いで一気に書き上げてみましたが。

…ちゅーしてない…！！
…クリスマスですらない！
でも甘酸っぱい…！（笑）

　もはやこんな二人にすら、私の左胸にはいっているレモンはきゅんきゅんするので末期かもしれません。

　お読みいただき有難うございましたｖ
　…あ、メリークリスマス！！（無理矢理）


H21.12.25