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『茶褐色に充てられたとしか思えないこの現状』
『頭を振って掻き消した親父ギャグは、案外的を射ていて困った』

・一日遅刻なバレンタイン話
・バカップル妹太
・甘すぎる痴話喧嘩。むしろ喧嘩になってない
・妹子が大人げない

上記、どんと恋!という方
バレンタイン~よりどうぞ!


++++++++++++++



 聖バレンタインディ。

 感謝の気持ちや秘めたる想いを込めて異性…或いは同性にちょこれぃとを渡す日。
 ……という間違った認識にされた聖なる日の事を、どこかの世界ではこう呼ぶらしい。
 太子が何年か前に朝廷内に持ち込んだ、明らかに時代と流行を先取りし過ぎた異国行事。
 これは、彼のふざけた提案にしては珍しく当たり行事のひとつだったりする。

 甘い香りが行き来きし、あらゆる桃色が黙認されるこの日。
 意中の相手の行動や互いの手持ちのチョコの数を気にし合う男性陣をはじめとし、朝廷内はどこかふわふわと浮足立っていた。


「まあ…なんだかんだと言いながら、いつの時代もステータスというものに振り回されるのが男心であり、男の性ですよね…きっと」

 そういう格付け、男なら誰だって好きですからね。
 今日の主役の甘いそれをひとかけかじり、残りを茶色の海に落しながら妹子は他人事のように呟いた。


 事実他人事なのだ。
 個数報告をしあう同僚達も、妹子には個数を聞いてこないので。


「なんていうか…『小野は凄いな』って言葉には、苦笑を返すのと照れるのどっちが角が立たないんでしょうね」


 貰えるかどうかと聞かれたら、間違いなく妹子は貰いまくる側の人間である。
 …ただしそれがイコール、モテていると判断する世の中の認識には大声で反論したい。
 切実に。


 そもそもこのバレンタインにおいての女性陣は『作る』という事と『渡す自分』ということに特にこだわっているように思う。
 どこぞの青ジャージのよくやるキャッキャウフフとしたあのノリと一緒。楽しんでいる自分に酔っている。
 そしてそこには、ソワソワする男陣と同様に一種の連帯感があるのだ。

 だから例え意中の相手がいなくとも、渡すという行為でその輪の中に混じりたい!という人達だっているわけで。
 そんな女性は……競うことにこだわりガツガツを目に見えて押し出している同年代の彼等より、安全そうで無害そうな妹子に渡す方が安心だと判断するわけだ。



「……というのが、僕に集まるチョコこの量に対する正直な考察なんですけど、どう思いますか?」
「…お前は最高に無粋だな!」


 妹子の隣で作業を見つめながらむすりと黙っていた太子が、呆れたように叫んだ。
 無粋!ほんと無粋!
 二回も言うほど大事なことでもないのに三回も無粋と連呼されて、流石の妹子も眉間にシワをよせた。


「無粋ってね……恋人にチョコを用意してないとかいう酷い人代表な太子に粋を語られたくないです!」
「…私だって、恋人の横で他の奴から貰ったチョコ食い散らかしながら何か作ってる奴にそんな事言われたくないよ!」


 こぽり揺れる水音と、カシャりとぶつかる金属音。
 纏わり付くような甘ったるい匂いが充満する台所。

 匂いの元凶に目線をおとせば、鍋に収まり揺れる金属ボウルのその中で、茶褐色がとろとろに崩れて場違いな甘みを主張していた。


「……何で用意しなかったんですか、今年は」
「…だってお前、去年も一昨年もウンザリするほどもらってただろっ!そして私をもその処理に付き合わせたじゃないか!!」
「太子、喜んで食べてたでしょう!!」
「私だって最後はげんなりだったよ!私、甘いのより辛いのの方が味としては好きだし!」


 どうせ同じ茶色ならチョコよりカレーのが絶対良い!と呟くオッサンに、やっぱりアンタの方が無粋だとつぶやきヘラを握る指先に力を込めた。
 気持ち乱暴になった動作は自覚しているが、これくらいしないとやってられない。


「……お前、拗ねてる?」
「いいえ全く」


 説得力のないであろう言葉を吐いて、また一粒茶色を食む。
(……あ、これは少し苦めだな)
 喉にはりつく甘さの自己主張を感じながら、残りをざらざらと鍋にそそぎ入れる。
 残りのチョコはいつの間にかあと一箱だ。



「…妹子?」
「…………」
「…いーもこやーい」
「…うっわっ!……ちょ、何を妙なことしてんですか!!」


 軽やかな、それでいて甘さを含んだ吐息を突然耳元に吹き込んできて、さらにどさくさに頬に口づけられた。
 背中にはりつく硬い骨張った感触。相変わらずな、香辛料臭いその体臭。
 慌ててその腕を振りほどけば、悪ガキみたいに笑った太子が、好きだぞ!なんて聞いてもいないことを告げてきた。


「…いや、何でいきなりそうなるんですか、急に」
「フヒョヒョヒョ!…都会ですっかりスレてしまった妹子に愛をギブしてやるでおま!!……キャッキャウフフで何が悪い!馬鹿芋!」
「別にスレてませんよ!…っていうかまたずいぶん時間差な話題を…」


 気味の悪い奇声や含み笑いは、何かくだらないスイッチが入ってしまっている時の太子の癖だ。
 多分…先程の話の中で彼の名を上げて揶揄したことが気に入らなかったのだろう。

(…意外と根にもつんだよな、この人…めんどくさいなぁ…何企んでんだか)


「愛をキブって…チョコもないのにですか?」
「っていうか、私がチョコ用意してなかったのはわざとだもん。………ここまであからさまに拗ねられるとは思わんかったけど…」
「は?……わざと?!」
「だって…別にチョコなんてなくても、私はお前にとびっきりあんむぁーいの、渡せるんじゃい!!」
「ちょっと太…!」
「好きだよ、妹子」
「っ!」


 問い詰めようと発した言葉を遮って。
 穏やかに目を細めて言われた真面目な響きに、どくり。自分の血液の流れが早まる音がした。


「…私、毎日たくさんお前に感謝してるよ。ありがとうな?」

「好きとかそういうのだけでパンクしそうになるぐらい妹子が好き」

「好きだよ。それだけは、そこの茶色い山積みチョコには負けないから」


 振り回されてばかりな日常には慣れているけれど、こちらの路線はなかなか珍しいパターンでひどく調子が狂う。

 とっさに、言葉がでない。

 そんな妹子を見てしてやったりとばかりに笑う太子が幸せそうで、それがまた悔しい。


「だから安心しろ!…例えどんなにスレてて無粋で酷男でも、私はお前が好きだからな!馬鹿なおいもめ!」
「……………っの!」

(ああもう…人の気もしらないで!自分ばかり、言いたい放題言いやがって……このっ!)


 ああ、なんだか腹が立ってきた。逆に。
 けれどそのままいつもの様に罵倒するだけというのはひどく悔しいので、ここは敢えてこちらも路線変更。

 笑ってやる。
 それはもうにっこりと甘く笑いかけた。


「……情熱的な告白、どうも。まあ、太子が僕を好きなのはよーく知ってますよそんなこと。…っていうか僕のがきっと、夢中ですからね?」
「……っ…ふ、ふふん!しれっと言ってるけど、そんな赤い顔で言われたって余裕ないのバレバレでおま!!」
「うるさいですよ!太子だって赤いですよ顔!キモ可愛いなチクショウ!」
「キモいは余計じゃい!お前なんか黙ってれば大体いつも可愛いよ!ああもう好きだよ馬鹿!」
「可愛い言うな!アンタは黙ってれば綺麗ですけど喋るとアホで可愛いんだよこのアホ!!」

 いつもと同じやりとりに見せ掛けた、桃色会話。
 馬鹿みたいに赤いお互いを見て、最終的には罵り合いみたいな告白劇。

(なんかこれってまさに罵り愛……うわ何を言ってんだ僕は!!)


 頭を振って掻き消した親父ギャグは、案外的を射ていて困った。
 ………どうせ後から思い返せば、どれも恥ずかしくなるようなやりとりなのだ。
 一も百も一緒だ。

(ああもう……言ってやれ!)

「…どうせアンタと居ると楽しいですよっ、悪かったですねこの馬鹿太子」
「……妹子?」
「感謝してますよ。笑えるくらいアホな貴方と笑い会えるこのアホな日々には!……つまり」

(つまり僕はあなたがどうしようもなく愛おしいんですよ!)


 目玉を転がり落としそうなほど見開いて、驚きを表すその表情。
 どうやらわけのわからない照れさせあいはこちらが勝ったらしい。
 耳まで赤い。ざまあみろ。
 自分も人のことは言えないだろうけど。


「……………お前、そういうの…ズルイぞ…!」
「いつもの太子の無自覚な不意打ちのがよっぽど卑怯です」


 纏わり付くような甘ったるい匂いが充満する台所で、ぐしゅぐしゅに赤い顔を見合わせる。


「……確かに、チョコより甘かったですね」
「…そうだろう、流石私」
「でもこれ、今日だからこそ出来る事ですよね」
「……全くだ」


 茶褐色に充てられたとしか思えないこの現状。

 たまにはとか。珍しく、とか。
 やっぱり素直に胸のうちを晒すのはそのぐらいのが、自分達には調度良いかもしれない。


(破壊力が高いので)
(…………自他、共に)


「…あー…胸やけしそう…」
「むしろ焼けすぎて焦げとるよ…うひー!!」


 笑顔が。声が。
 甘く優しくとろとろに、この目に耳に脳裏に焼き付いて離れない。


【当て馬は茶色く甘い】



END



+++++++




 ……甘い…!!
 妹太、迷走の果てにバカップルで落ち着きました(笑)

 喧嘩ネタは大好きすぎて困ります。
 大騒ぎしたり口喧嘩したりしないといちゃつけないのかお前ら!
 …みたいな喧嘩っぷるが昔からツボです…!らぶ!

 なんだか予定以上にぐっだぐだ甘くなりましたが結果オーライで
(甘けりゃもう何でもいいよねこの日は!)

 一日遅れましたが、ハッピーバレンタイン!

H22.2.15
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HN:
べに釦
性別:
女性
自己紹介:
名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日

・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電

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