※はじめましての方は『※はじめに』をご一読下さいませ(心の自己防衛)
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『だからわざとそっけなく告げる』
『ゆらゆら揺れる愛しい背中を、せめて今ぐらいはと』
※妹太
※太子も弱音をはきたいし
※薄暗甘い
上記、大丈夫!という方は
続きを~よりどうぞ。
++++++++++++++
『ゆらゆら揺れる愛しい背中を、せめて今ぐらいはと』
※妹太
※太子も弱音をはきたいし
※薄暗甘い
上記、大丈夫!という方は
続きを~よりどうぞ。
++++++++++++++
その背中はどこまでもまっすぐに。
けれど。触れたらそのまま折れてしまいそうな危うさで、ゆらゆらと揺ていた。
【天秤人】
「……私って偉大でイケメン摂政で、そりゃあもうビッグな男だよなぁ」
「…サボりの言い訳をするかと思えばまさかの寝言ですか。…このアホ皇族……!」
外交という公務を終えた直後、脱兎の如く逃走したらしい駄目上司を捕獲したその第一声が、私は偉大。
一発……いや、一度といわず七発ほどその無駄に露出した額を殴ってやりたい。
妹子は心底げんなりとした表情で、盛大にため息をついた。
吐いた息の主成分は、呆れと諦め。
けれど不本意ながら安堵も、半々分だったりもするからまた腹立たしい。
(僕がどんだけ走り回ったと思ってるんだ…!!)
それなのに、この態度。
こちらの心情をちっとも察してくれない太子に、思わずこちらの口が悪態を紡ぐのも仕方ないというものだ。
「……三時間以上も姿をくらましてておいて…まさかこんな、馬鹿みたいな所に居るなんて…」
太子を見つけた場所を改めて見渡す。
『ここ』は、真っ先に探したのだ。
太子が居ないんですよ、と役人に告げられて。
自惚れと笑われようと、一番にこの場所を思い描いたのだから仕方ない。
けれど妹子の予想に反し、そこに彼の姿はなかった。
次いで法隆寺、池に馬小屋、はたまたごみ箱。
彼の居そうな場所を真面目に駆り尽くしたが見つからず時は過ぎ。
流石に、本気で誘拐やら暗殺やらの可能性を妹子が疑い始めた頃。
念のためもう一度最後に…と、最初に訪れたこの場所に向かうその道中。
暮れはじめた空を、焦り混じりに見上げたその瞬間、求めていた人物をあっさりと見つけてしまったのだ。
(…探し人が自分の住居……しかも屋根の上に居るなんて、とんだ盲点だよ…くそう)
小野妹子邸、大して高くもないが低くもない屋根の上。
マッチ棒のようなシルエット。
茜に溶けるその姿を見つけて、駆け寄って。
呼んでも罵倒しても全く降りて来ないので、しぶしぶ屋根に登って今に至るわけだ。
当初の予想が当たっていたことに喜ぶべきか、悲しむべきか。
何より…頭上に目をやらないほどに焦っていたらしい自分が、恥ずかしいやら悔しいやら。
どんな思いで駆け寄ったかなんて、いまさら説明しろと言われても相応しい言葉はみつからない。
悶絶するほど痒い言葉になるに違いないのだ。
それほどまでに、必死に僕は。
「脱走しておいて…その上自画自賛とか……ホント、寝言は寝て言ってくださいこの阿呆皇族…!良い歳した大人が隠れんぼなんて痛過ぎです」
「に、二回も阿呆って言われた……っていうか寝言なんていっとらんわい!見よこの曇りなき眼を!っていうか別に逃げてないやい!ちゃんと仕事したよ珍しく!」
「曇りなき?まな板の上の生魚みたいな目して何いってんですか!っていうか珍しいとか自分で言う辺り黄金級のアホですね全く…!」
事実を認めたくない妹子は、八つ当たりのように捻くれた言葉を呟き。
さらにそこにつらつらと余計な一言二言を挟みながらの太子の言い訳は続く。
「太子は外交以外にも色々あるでしょう?全く……。で?逃げたのでないなら、何をしてたんですか」
「…別にぃ。私はただ…こう…外交で擦り減っちゃった『私は偉大なんだパワー』を注入しにきたんだよ!ほらあれだ……イモトレ!」
「…イメトレと言いたいんですかもしや」
「それそれ」
そう言ってくるり、人差し指で円を描きながら宙を指す。
しつこい芋ネタは敢えてのスルー。それをしってか知らずか、妹子に背をむけたまま太子は指遊びを続ける。
くるり、くるり。
動きつづけるその指先からうなじまでを、なんとなく目線で辿れば、そこには普段とは違うシルエット。
…正装が珍しい皇族なんて、きっと彼ぐらいだろうな。
ふと、そんなどうでもいいことを思った。
「でもさ、駄目なんだよ」
「え?」
「なんだか、やっぱり、違うんだ」
ぽつり、と漏れたのはいつもとは違う色の言霊。
(さっきから、こっちを見ないからもしや…とは思っていたけど)
これもまた、珍しいことだ。
彼は自らの負の感情を、あまり真面目に見せたがらない人だから。
「………外交、うまくいかなかったんですか?」
「いや、それはないぞ。すんごい敬われたもん、さすが私!!ちらほらだ!!」
「それを言うならチヤホヤでしょう」
「そうとも言うな!…まあ………なんていうか……だからこそ今、迷走しとるんだ。逆に」
「……逆に?」
「うん。…ほら…私、意外と捻くれものだろう?褒められるとなんか、不安になる」
「…ああ、Mなんですか」
「違うわいっ」
テンポよく生まれる会話にはいつも通りのリズム。
だんだんと、抑揚のなくなる声を除いては。
「………最初に言ってた、偉大でイケメンでビッグな…とか言ってたアレを。僕に否定して欲しかったんですか?」
「いいや?……お前に、じゃないな」
深呼吸のついでみたいにため息をついて太子は肩を竦めた。
「貴い、血筋。身分…地位。わたしは色々、持ってるんだけどさ」
「それでもあの空に比べたら、偉大な私だって、ちっぽけなもんだぞ!……って言ってみちゃったりしたかった。ちょっとだけ、そんな健気な私になりたい気分だったんだ」
(…謙遜?……いや、違う……ああ、そうか)
これは誰しもが感じる些細な感情。珍しくもない当たり前の衝動。
けれどそれは。それを、真の意味で口にすることは。
この人は、許されていないのだ。
この人は。
国の、民の軸であり、柱たる特別だから。
「偉大でビッグな私も素敵だけどさー……水蒸気とか煙とか…そんな小さな粒子のまま私でいられたなら、それはそれで気ままに飛べて魅力だなぁ…なぁんて、さっ」
そういってやじろべえのように、両手をひろげて、片足立ち。
ふらふらと揺れながら、夕日にむかって笑っている。顔が見えなくても、それが気配でわかってしまう。わかってしまう自分が、もどかしい。
妹子はただ無言で紫冠男の後頭部を小突いた。
「っうおわっ?!こら、急に押すなよ危ないだろ!」
「…何とかと馬鹿は高いところが好きなのはわかりますけど、煙はやめといてください。面倒なんで」
「面倒?!っていうか濁すべき所を濁してないぞお前!」
「…太子が太子でないと、僕が貴方を見つけにくくてしょうがないでしょう。太子は無駄に臭くて縦長だからこそ、サボって隠れてる時に探しやすくて助かるんですから」
「…お前、人をウドの大木みたいに…!!っていうか臭くないし!!」
「はいはい」
「……ああ、でも………お前に見つけてもらえないのは確かに、ツマランよな」
粒子になるのは、却下か。
なんて忍び笑い。
そんなことを口にする彼が、どうしようもない馬鹿なんだと妹子は知っている。
そして、自らの現状がどうしようもないことなのだと受け入れている彼が、妹子に決して救いなどを求めていないことも知っている。
だからわざとそっけなく告げる。
「別に煙じゃなくても…太子は何時だってぶっ飛んでる馬鹿ですよね」
「何をうっ?!」
「だからまあ…飛んでても、エセ健気でも。どんな気分の太子でも、僕にはただの太子ですんで」
つまらなくならなくて、残念ですね。
ゆらゆら揺れる愛しい背中を、せめて今ぐらいはと、支えるみたいにかき抱いて。
甘えるみたいに預けられた体の軽さに、たまらなくなった。
総てを包んで、それでも笑う。
その強さを知っている。
(ああ、それでも)
(その両腕の重しの、半分でも共に持てたら、よかったのに)
END
+++++++
太子も弱音をはきたいし。
書きたかったもの→本音の弱音を、妹子が潰れない程度に漏らす大人な太子と、全力で寄りかからない太子にうじうじ、じりじりする妹子。
(私の中の夢見過ぎ太子像、丸出し)
…しかし小野さんが思った以上に男前に動き、予想よりずいぶん薄暗甘くなりました(笑)
当家の遣隋使はお互いに甘やかし上手なようです。
辛いですよね、なんて同意でもましてや否定でもなく『そうですか』というずけずけとした肯定。
それが妹子が思う以上に太子にとっての救いになってるに違いないという願望。
お付き合いいただき有難うございました。
H22.2
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名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日
・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電
さらに濃ゆい版の詳細は※
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