※はじめましての方は『※はじめに』をご一読下さいませ(心の自己防衛)
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『灰色に滲む世界が、ぼんやりといろんなものを隠している』
突発連作、その2
・転生パロ+現パロ
・鬼男視点
(※その他特記事項についてはプロローグ前書きにて記載)
上記、大丈夫!という方は続き~よりどうぞ。
【ある日にむけて】一覧
1.プロローグ
2.→115
++++++++++++++
突発連作、その2
・転生パロ+現パロ
・鬼男視点
(※その他特記事項についてはプロローグ前書きにて記載)
上記、大丈夫!という方は続き~よりどうぞ。
【ある日にむけて】一覧
1.プロローグ
2.→115
++++++++++++++
【ある日に向けて】
→115
暗い闇色というよりは、濁った灰色。
そんな、鈍色に塗り潰された夜。
どんよりと厚い雲が月明かりも星明かりも飲み込んでしまっていて、数少ない街灯だけが僕の行く道を照らしている。
こんな夜は決まって、考えてしまう事がある。
帰る場所を違えては行けないよ、と呼び掛ける外灯が導くその先は本当に僕の在るべき場所なのだろうか…と。
正体のわからない焦燥。まるで迷い子のような錯覚に陥りながら、それでも無機質な明かりの導くままに歩みを進めるしか僕には術がない。
今までも、今も、そしてきっとこれからも。
「はぁ……あー……飲み過ぎた…!」
きいんと冷えた静かな住宅街。
そんな中を、ほろ酔いというには随分と重い足どりでとろとろと歩く。
刹那の白とともに吐き出された僕の独り言は、静かな住宅街に思いの他大きく響いてすこし驚いた。
思わずきょろりと周囲を見回す。
…このご時世、一歩間違えばすぐさま不審者扱いだ。それはまずい。
(うん、誰もいないな。…よし)
周囲を確認して安堵の息。
しかし、誰もいないからこそ、今の挙動不審な自分の仕種がひどく間抜けで格好悪いものになった事にも気が付いてしまい、今度は失意のため息をついた。
(ああくそう、僕のキャラじゃないだろう…一人ボケツッコミとか…!)
どうしようか、今の自分に自分がヒいた。
…これも全部、酒という存在が悪い…!姿のない敵を睨みつけるように空を仰いだ。
今日は、勤務先の新年会だった。
こういう行事の度、まだ社会人一年生の新人である僕は『後輩を可愛がる』と言う名目で浴びるほど酒を飲まされる。
それはもう、ざばざばざばと…全く嫌な文化である。
新人は場を盛り上げるには恰好の生贄だ。
取り合えず次の世代がくるまで弄られるのが宿命であり、それが社会の歴史というものなのだと今の僕はこの身を以て悟っている。
「でも…今回は…ひどかったな」
正月明け初の飲み会、というのもあり…やたらとハイテンションな上司達に僕はあやうく潰されるところだった。
(ちなみに同僚は半数近く潰されていた)
だいたい先輩たち飲ませすぎなんだよ。
…僕は人並み以上には強いけれど、呂律や態度でわかりにくいだけでちゃんと酔ってるっていうのに。
ウーロンハイだとごまかした烏龍茶で、なんとか酔いを薄めていた影なる努力を聞かせてやりたい。
僕はザルでもなけりゃワクでもない、たかだか23年しか生きていないただの若造なのだから。
「…はぁ…まあ、これも数ヶ月の辛抱か…しっかし…」
(…今日は本っ当……冷えるな…)
ここ数日、珍しく降り続いた雪のせいで景色にはうっすらと白が混じっていて。
灰色に滲む世界が、ぼんやりといろんなものを隠している。
木々の上の雪がするんと滑る音を遠くで聞きながら、ふと思う。
この寒さの中…うっかり帰宅途中で酔いに負けて寝たりしたら大変だよな。まちがいなくタダでは済まないだろう、と。
…まあ、そういう意味ではこの刺すように冷たい空気も、今の僕にとっては酔い醒ましとして有り難いのかもしれない。
自分がその、万が一のうっかりをしでかしてしまっては洒落にならないし。
「………さっさと帰るか」
日付を跨ぐ前にはなんとか家に着けそうかなぁ、なんて思いながら、速度を早めて歩きだす。
百メートル先の曲がり角を右に曲がれば、僕のマンションまではもう目と鼻の先だ。
「……………ん?」
そうして、ようやく見えてきた自分のマンションの入口。
そこにはあからさまな違和感があった。
(………おいおい…マジかよ…!)
最初は、放置されたゴミかなにかかと思ったが…違う。
ぐったりうずくまる黒い影。
これは、生き物だ。
ついさっき考えたばかりの『洒落にならない大変な事態』が、今まさに目の前で発生していた。
「ちょっと…おい、生きてるよな…?」
何度声をかけてもぴくりともしない。
揺さ振ろうと触れた体は夜露でしっとり冷え切っていて、ぞくりとした。
(もう、駄目なんじゃないか、これは)
嫌な予感に僕の心臓が一気に加速する。
しかし良く良く見れば、かすかに胸が上下していて。慌てて顔を近づけ呼吸を確認すれば、静かな呼吸音が聞こえた。
「………暢気に寝てる場合じゃないだろ…!なんて危機感のない奴だよ…!!」
一定のリズムで刻まれるそれは、どう考えても、寝息だった。
なんて心臓に悪い奴だ。
凍死願望でもあるのかこの熟睡野郎は。
(どうする。どうする、僕…!)
動揺しつつ、回っていない頭で考えた。
二分くらい。
そして結局、酔いで判断力の鈍った僕の自問自答が出した結論は、普段の僕だったら『面倒だ』と真っ先に反論するような選択肢だった。
「……………軽っ」
抱き上げたその体は、見た目以上に痩せこけていて冷たかった。
僕の体温が高いということを差し引いたって、だ。
(ああもう何で三階なんかにあるんだ僕の部屋…!遠いだろ!っていうか寒い!)
予定外の事態にひどく狼狽している僕は、先ほど感謝した寒さに対し激しく脳内で悪態をつきながら、それでも早足にマンションの階段を上る。
腕の中の熟睡野郎は、ぴくりとも動かない。
まるでくたびれた縫いぐるみのように、振動に揺らされるがままで。
声も発さず、瞼を開く気配もない。
アルコールのせいか、それとも先ほど心底焦ったそのせいか。
ばくばくと、心音がひどく煩い。
ぎりぎりと締め付けるように、軋む。
「……明日は、二日酔い…かもな」
焼けるように熱いこの左胸の痛みの理由を結論付け、玄関の扉に手を掛ける。
込み上げる衝動の答えは、意味のない呟きになって。ほんの一瞬白く浮かんで、夜の中に消えた。
Next→【3.→116】
++++++++++
1月15日夜の遭遇劇。
白と黒。どちらにも向かいきれていない、無意識の灰色を抱えて生きる鬼男くん。
この転生鬼男くんは大卒の社会人一年生。一人暮らし。随分体育会系なノリの職場なようです。
作中では大分酔いどれ(笑)ですが、お酒はかなり強い方。
とにかく難産な回でした…この次の3話と共に。
短期連載…だったのですが…間に合わせたい日が過ぎてしまったので駆け足の必要がなくなってしまった…
(それ以降のお話はほぼ書き終わってたのに…)
H22.3.3
H22.5.30修正+記事日付移動(3/4→1/15)
→115
暗い闇色というよりは、濁った灰色。
そんな、鈍色に塗り潰された夜。
どんよりと厚い雲が月明かりも星明かりも飲み込んでしまっていて、数少ない街灯だけが僕の行く道を照らしている。
こんな夜は決まって、考えてしまう事がある。
帰る場所を違えては行けないよ、と呼び掛ける外灯が導くその先は本当に僕の在るべき場所なのだろうか…と。
正体のわからない焦燥。まるで迷い子のような錯覚に陥りながら、それでも無機質な明かりの導くままに歩みを進めるしか僕には術がない。
今までも、今も、そしてきっとこれからも。
「はぁ……あー……飲み過ぎた…!」
きいんと冷えた静かな住宅街。
そんな中を、ほろ酔いというには随分と重い足どりでとろとろと歩く。
刹那の白とともに吐き出された僕の独り言は、静かな住宅街に思いの他大きく響いてすこし驚いた。
思わずきょろりと周囲を見回す。
…このご時世、一歩間違えばすぐさま不審者扱いだ。それはまずい。
(うん、誰もいないな。…よし)
周囲を確認して安堵の息。
しかし、誰もいないからこそ、今の挙動不審な自分の仕種がひどく間抜けで格好悪いものになった事にも気が付いてしまい、今度は失意のため息をついた。
(ああくそう、僕のキャラじゃないだろう…一人ボケツッコミとか…!)
どうしようか、今の自分に自分がヒいた。
…これも全部、酒という存在が悪い…!姿のない敵を睨みつけるように空を仰いだ。
今日は、勤務先の新年会だった。
こういう行事の度、まだ社会人一年生の新人である僕は『後輩を可愛がる』と言う名目で浴びるほど酒を飲まされる。
それはもう、ざばざばざばと…全く嫌な文化である。
新人は場を盛り上げるには恰好の生贄だ。
取り合えず次の世代がくるまで弄られるのが宿命であり、それが社会の歴史というものなのだと今の僕はこの身を以て悟っている。
「でも…今回は…ひどかったな」
正月明け初の飲み会、というのもあり…やたらとハイテンションな上司達に僕はあやうく潰されるところだった。
(ちなみに同僚は半数近く潰されていた)
だいたい先輩たち飲ませすぎなんだよ。
…僕は人並み以上には強いけれど、呂律や態度でわかりにくいだけでちゃんと酔ってるっていうのに。
ウーロンハイだとごまかした烏龍茶で、なんとか酔いを薄めていた影なる努力を聞かせてやりたい。
僕はザルでもなけりゃワクでもない、たかだか23年しか生きていないただの若造なのだから。
「…はぁ…まあ、これも数ヶ月の辛抱か…しっかし…」
(…今日は本っ当……冷えるな…)
ここ数日、珍しく降り続いた雪のせいで景色にはうっすらと白が混じっていて。
灰色に滲む世界が、ぼんやりといろんなものを隠している。
木々の上の雪がするんと滑る音を遠くで聞きながら、ふと思う。
この寒さの中…うっかり帰宅途中で酔いに負けて寝たりしたら大変だよな。まちがいなくタダでは済まないだろう、と。
…まあ、そういう意味ではこの刺すように冷たい空気も、今の僕にとっては酔い醒ましとして有り難いのかもしれない。
自分がその、万が一のうっかりをしでかしてしまっては洒落にならないし。
「………さっさと帰るか」
日付を跨ぐ前にはなんとか家に着けそうかなぁ、なんて思いながら、速度を早めて歩きだす。
百メートル先の曲がり角を右に曲がれば、僕のマンションまではもう目と鼻の先だ。
「……………ん?」
そうして、ようやく見えてきた自分のマンションの入口。
そこにはあからさまな違和感があった。
(………おいおい…マジかよ…!)
最初は、放置されたゴミかなにかかと思ったが…違う。
ぐったりうずくまる黒い影。
これは、生き物だ。
ついさっき考えたばかりの『洒落にならない大変な事態』が、今まさに目の前で発生していた。
「ちょっと…おい、生きてるよな…?」
何度声をかけてもぴくりともしない。
揺さ振ろうと触れた体は夜露でしっとり冷え切っていて、ぞくりとした。
(もう、駄目なんじゃないか、これは)
嫌な予感に僕の心臓が一気に加速する。
しかし良く良く見れば、かすかに胸が上下していて。慌てて顔を近づけ呼吸を確認すれば、静かな呼吸音が聞こえた。
「………暢気に寝てる場合じゃないだろ…!なんて危機感のない奴だよ…!!」
一定のリズムで刻まれるそれは、どう考えても、寝息だった。
なんて心臓に悪い奴だ。
凍死願望でもあるのかこの熟睡野郎は。
(どうする。どうする、僕…!)
動揺しつつ、回っていない頭で考えた。
二分くらい。
そして結局、酔いで判断力の鈍った僕の自問自答が出した結論は、普段の僕だったら『面倒だ』と真っ先に反論するような選択肢だった。
「……………軽っ」
抱き上げたその体は、見た目以上に痩せこけていて冷たかった。
僕の体温が高いということを差し引いたって、だ。
(ああもう何で三階なんかにあるんだ僕の部屋…!遠いだろ!っていうか寒い!)
予定外の事態にひどく狼狽している僕は、先ほど感謝した寒さに対し激しく脳内で悪態をつきながら、それでも早足にマンションの階段を上る。
腕の中の熟睡野郎は、ぴくりとも動かない。
まるでくたびれた縫いぐるみのように、振動に揺らされるがままで。
声も発さず、瞼を開く気配もない。
アルコールのせいか、それとも先ほど心底焦ったそのせいか。
ばくばくと、心音がひどく煩い。
ぎりぎりと締め付けるように、軋む。
「……明日は、二日酔い…かもな」
焼けるように熱いこの左胸の痛みの理由を結論付け、玄関の扉に手を掛ける。
込み上げる衝動の答えは、意味のない呟きになって。ほんの一瞬白く浮かんで、夜の中に消えた。
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1月15日夜の遭遇劇。
白と黒。どちらにも向かいきれていない、無意識の灰色を抱えて生きる鬼男くん。
この転生鬼男くんは大卒の社会人一年生。一人暮らし。随分体育会系なノリの職場なようです。
作中では大分酔いどれ(笑)ですが、お酒はかなり強い方。
とにかく難産な回でした…この次の3話と共に。
短期連載…だったのですが…間に合わせたい日が過ぎてしまったので駆け足の必要がなくなってしまった…
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名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日
・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電
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