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『全てを打ち付けて、また、何ごともなかったかのように切り離されるその関係』
『そうやって、二人は今もこうして隣にいるのだ』

お題ラブラブな二人へ【相合傘】より
拍手用…でしたがやや長くなってしまったので、こちらに。

・隠れておつきあいver鬼閻
・…な単発学パロ
・切甘?

 上記ご注意の上、続き~よりどうぞ。

++++++++++++++

 日常に混じる小さな非日常。

 それにときめくこの胸を否定するのか、肯定するのか。
 それを判断するのは誰でもなく自分自身だ。

 …けれど、非常識かどうかを判断するのはあくまで世間という目の常識。
 正解か間違いなのかは誰にもわからない、それは酷くいびつで曖昧な物差しなのだ。



【哀逢い傘】




 好意も行き過ぎれば『脅威』と呼ばれるように。
 物差しの基準を越えた想いは、どこか歪んで見えてくる。

 自分の感情がもたらした結果を、閻魔はまるで他人事のようにぐるぐると振り返った。


(男と男、同性同士…というだけでも随分と、はみ出してしまっているのに)
(とんだ困ったちゃんだなぁオレってば)


 最近になって、気付いた事がある。
 鬼男が自分へ向けるその態度が、他と違えば違う程それを異常なまでに嬉しく思う…という少々アレな、この症状が。
 さらに悪化しているらしいというその事実に。

 ただ優しくされるだけではもう、駄目なのかもしれない。
 とにかくとにかく。誰でもない、閻魔だけに向ける鬼男の仕種にひどくときめくのだ。

 だからあの罵倒や冷たい眼差しも正直、本当堪らない。
 ぞくぞくと背中から喜びがはい上がって、心臓がぎゅうっと捕らえられてしまう。
 多分、たとえ向けられるその感情が激しい憎悪や嫌悪であったとしても、来るところまでキてしまっている今の閻魔ならそれすら喜んでしまうのだろう。

(うわぁ。これじゃ、変態とかMとか言われても文句言えないよねー)


 まあ、悲しいことに…いや、幸いなことに。
 閻魔は鬼男に憎まれてはいないのだけれど。


(…むしろ、ね。好かれてますよねーこれ。かなり)



『社会科の授業中に居眠りしてたらさぁ…放課後居残り補習になっちゃったんだよねー。参っちゃう』

 …なんて、ぽつりとぼやいた他愛もないこちらの会話もしっかりと拾ってくれていたらしい。
 そうして今。
 薄暗い校舎を歩く閻魔の一歩前にあるのは、ぴんと伸びた鬼男の背中。

 ……部活もとうに終わっているだろう時刻まで、当たり前みたいにこうして待っていてくれた鬼男に。
 きゅんきゅんせずに何としようか。


「いやー参ったねもうっ!馬子先生の課題、問題とかじゃなくてテキストの書き取りだった…力技なんてあんまりだ…!」
「自業自得だろ惰眠イカ」
「うっ!」
「まあ…すぐ終わる課題だしてもしょうがないからでしょうね。アンタ頭は悪くないですからね成績的な意味では」
「え、褒めてる?」
「いえ、小馬鹿にしてます」
「酷い!!」


 いつも通りな展開の言葉を交わし合いながら歩く、つかず離れずな閻魔と鬼男との距離。

「…………」

 なんとなく。意図的に少し、緩めてみた歩調。
 つい先ほどまで辛辣な言葉を紡いでいた鬼男との距離は、それでも一定のバランスを保ったままだった。

(…歩幅、合わせてくれてる)

 そんな小さなことが嬉しくて、閻魔はふわりと笑みを零した。


(うん。十分幸せ……なんだけどなぁ)



 夕暮れの教室…などというセンチメンタルの代名詞の様な空間で。
 先程まで書き取っていたプリントの内容が多分、よろしくなかった。

 法が、社会だ、なんだかんだ。
 いつも以上に後ろ向きな閻魔の思考が、いつもは気にしないように努めてるそれらを妙に意識させてくる。


(こうして想いあえていたとしても、それが世界のカタチから外れてしまっていたのならば歪みと呼ぶんだよね。
……世論ってやつはさ)


 無論、そんなもの始めから分かりきった上で始めた関係だった。
 だから二人以外、その真実の形を誰にも知られないように擬似膜を幾重にも被せて。
 普段は好まぬ嘘という膜も、それはもう多用して。
 そうやって、二人は今もこうして隣にいるのだから。

(それを卑怯とは思わない)
(…だって。全てさらけ出して歩くには、オレたちには愛しいものが多すぎたんだ)






「あ。雨、降ってきましたね」

 下駄箱から革靴をつまみあげ、床に落とす。
 さあ履こうという所で、一足先に支度を終えた鬼男の呟きが背後から聞こえた。

「雨?……ええっ、オレ傘持って来てないよー!!」
「アンタなぁ……今日の予報、90パーセントだっただろ…降水確率」
「んなのオレが見てるわけないだろー。野暮なこと言うなよ鬼男くんったら」
「……まあ、そんなことだろうと思ってたけど」


 小さな溜め息と、ぱん、とビニールが空気を含む乾いた音。
 勝手知ったるなんとやら。
 今更形式ぶった謝礼を交わす仲でもなくて。
 ほら、なんていうそんな小さな鬼男の問い掛けで、当たり前のように動ける自分。

(うん、こういうの。すごく好き)

 軽い『ありがとう』の声と共に、これまた当たり前に空けられていた右側に滑り込んで。
 ぱつん、ぱつんと音を立てる頭上を見やった。

「すごいね、雨」

 雨の日独特の濡れたアスファルトのにおい。
 大粒で勢いがある、プールのシャワーを思わせるこの夕立はしばらく振り続きそうだ。

 自分達以外に、動く影もない道の上。
 街灯の白をうけて灰色に光る傘の下。
 このまま雨がすべてを塗り変えてくれれば良いのになぁ、とちいさく願った。


「大王」
「うん?」
「…さっきから。また何か、いらんこと考えてるだろ」
「んー………君のこと、考えてた」


 雨を通して一瞬だけふれる、大空と大地。
 全てを打ち付けて、また、何ごともなかったかのように切り離されるその関係。
 誰もいない通学路。
 並んだ家々という社会の窓も、打ち付ける雨がぼかして、隠してくれているに違いない。

 小さな傘の中、ふいに触れたこの温度も。
 重なるこの二人の形も、きっと。


 恵みの雨さまさまだね、なんて考えながら。
 …本当にそのつぶに感じているのは、恵みとはおおよそ反対の未来だったりして。
 相変わらずの矛盾がそこにある。


「明日も雨、降らないかな」
「……どうでしょうか」

 多分、閻魔の裏側の願いに気付いているのだろう。
 鬼男のその返答の味気無さが逆に切実さを含んでいて、思わず閻魔は笑ってしまった。

(君の、軽々しく不確定な約束を口にしない真面目な所、好きだなぁ)
(だからこそ、君のくれる言葉はとても信じられるもの)

 口にする代わりに、もう一度唇を寄せた。






「……あれ、雨止んだ?」
「通り雨だったみたいですね」
「…ざぁんねん」
「大王」
「……ん」

 名を呼ばれて、名残を惜しむひと滑り。
 心根に触れるように滴り落ちるあまつぶが、もう一度小さな逢瀬を連れてきて地面に消えていった。



 雨が、上がる。
 それは非日常の終わり。

 閉じられるそれはもう、ただの透明なビニールでしかない。
 何も隠さずなにも覆えない、筒抜けな膜をぶら下げたまま。
 並んで歩く二人はもう仲の良い友人の図だった。



END


++++++



 他人の関係をはかるあのまなざしは、一生ついて回るものですが。
 他人の交遊関係や周りの眼差しが異常なまでに気になるのって、あの時期の、学生時代特有の必死さですよね。
 …というわけでそれが書きたいが為だけの単発学パロでございました。
 切ない青春。らぶ!!
(まあ基本は、オープンで周りともどもワイワイやってるのが私の脳内学パロの彼等ですが…)

H22.5.22
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性別:
女性
自己紹介:
名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日

・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電

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