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※はじめましての方は『※はじめに』をご一読下さいませ(心の自己防衛)


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・賽日ネタ後半戦
前半の続き

++++++++++++++


「勝手、ね。……そうですね。けど」
「んおっ?!」


 寝台に乗り上げ、塊に跨がる。恐らく腹の上あたり。


「その理屈でいうなら…僕が僕に宛行われた時間をどう使おうと僕の勝手ですよね」
「そ…そうなる…かな?」
「じゃあ、勝手にしますからアンタは寝てて良いですよ。…寝ていられるのでしたらね」
「は?いやちょっ……え?!」

 組み敷いたまま、繊細な刺繍の施された夏仕様の掛け布団を器用に剥いで。
 相変わらず突飛な行動に弱い恋人が、状況を理解するその前に。
 寝巻の帯をあっけなく解き、青白い肌に褐色の指をすべらせた。


「え?ちょ待っ……っや、だってば!!」

 ぎょっとした顔で、鬼男の胸を押し返してくる仕種。

 いつもの抵抗、ではなく明確な拒絶で体を押し返してくる閻魔にますます苛立つ。
 ああ腹立たしい。
 その邪魔な両腕を掴みシーツに縫い付けると、感情に任せてその骨張った首筋に噛みついた。


「…っ!」
「肌、粟立ってますけど?…ああ、それくらい嫌ってことで良いんですかね?」
「っ…そうだよ!嫌だね!何をこんな…急にっ!」
「……いつもしてることでしょうが」
「……別に、無理に相手しに来てくれなくてもいいし!習慣として抱きにくるとか、そんな忠義は御免だよっ!!」
「……は?」


 何だか話が噛み合っていない。
 思わず動きを止めた鬼男に、ふてくされたように閻魔が呟いた。


「…『誘われるのは有り難いけど、僕にも色々都合があるんだから困る』…って、君、言ってただろ?」
「…はぁあ?僕がアンタにそんなこと言うわけないだろ」
「言ってたよ!!君が同僚と話してるの、オレ聞いちゃったんだから!」


(……同僚?……っあれか!!)


『僕はいつもふりまわされる側だからな。まあ……毎回そんなだと…割に合わないというか、ちょっと思うところもあるけど』

 そんなことを確かに言った。
 最近新しく恋人が出来たという同僚に、恋人お泊りお誘いレクチャーなどというプライベートすぎる相談をされて。
 正直に、自分は誘われる側だから参考にはならないと思う、と伝えたのだ。…無論、相手が閻魔というのは伏せて。


「『僕にだってその時の気分がありますからね。たまには…』……とか言ってたじゃないか。だから今回は君を誘わなかったのに。何で来ちゃうのさ」

 自分の放った言葉が、知らぬ所で、ずいぶん歪曲して伝わってしまったらしい。


(…ヤバイ、絶対大王に誤解されてるだろ、これ……!!)


「大王、あのっ…!」
「っていうか水臭いし鬼男くん。そういうのは、ちゃんと言ってくれていいのに」
「え?」
「こういう機会なかなかないだろ。君も、たまには同僚と親睦深めたりしたいんじゃないかなーってずっと気になってたんだ。ほら、別に、毎回常にオレと一緒に居る必要はないわけだしさぁ」
「……」


 ぐさり。

 一緒にいなくても構わない、と言われているも同じなその言葉が地味に痛い所を刺してくる。
 そんな鬼男に気付かずに、閻魔はさらに言葉を続けた。



「だって君は、これからもこの先もオレと一緒にいてくれるんでしょ?」

「だったら、たまの一回や二回くらい他の子に鬼男くん譲ってあげなきゃ罰当たっちゃうよ」



 ざすり。


 捻くれもので諦め上手な上司が見せた、最大級の信頼が胸を真っすぐ貫いて。
 鬼男の胸が本日最大の悲鳴を発した。



 こういう言い方をされたのは、初めてかもしれない。

(だってコイツ、でもとか、だってとかそんなんばっかで。諦め上手な、後ろ向き魔なのに)
(いつのまに僕のことを…いや、僕の知らない何かも含めたそんな丸ごとを…)

 どんな決意をもって、信じてくれていたんだろうか。

 絵に表すなら、ピンク色をした効果音がでかでかと光りながら走り抜けた感じ。
 要するに、きゅんときてしまった。


「大王……有難うございます」
「え、何が?」
「…あとですね…その、大王が聞いたとかいう発言のことなんですが……あれは、アンタとたまには離れたいとかそういう意味とはむしろ逆なんです」
「?」
「その…たまには……僕の顔も立てて欲しかったというか…。いつもいつも言われっぱなしじゃ、男として惨めだった…というか」
「……うん?」

(察しろよこの鈍感!)

「だからっ………僕だって、アンタと一緒に居たいと思ってるんだよ!察しろ!っていうか言わせろ!たまには誘わせろって意味だよ馬鹿野郎!!アンタどうせ自分ばっかだと思ってんだろ?!」
「えええ?!……それってつまり……今年もオレとイチャイチャちゅっちゅしたかったってわけか、鬼男くんは!!」
「言い方がいちいち変態くさいんですよアンタ。ウザッ!」
「ちょっ…君、デレの耐久時間短かすぎる……!」

 照れ隠しにぺちんと額を叩いてやれば、よよよ、とわざとらしく泣きまねをする。
 そんな閻魔を見下ろした鬼男は、いろんな感情を込めた溜め息を吐いた。

「大王」

 視線を感じおそるおそる鬼男を見上げた閻魔が、諦めを多大に含んだ表情で口をひらく。

「…あの……オレ、君の本音きけて嬉しくなったらまた眠くなっちゃったなー、とか…」
「眠気なんてどうせすぐ消えますよ」
「……ですよねー」


 鬼男くんってばケダモノ、なんてぼやきを無視して唇を寄せていくと、しょうがないなぁと苦笑した閻魔がその目を閉じた。

 先ほどとは打って変わった、ゆるやかで確かな許しのサイン。
 それに酷く安堵し、合わせあうだけの口づけを何度も贈る。

 予定していた形とは全く、大分違うけれど、ある意味では課題クリア。
(知らなかった新事実も見れたし…まあ良しとするか)

 けれど、あともう一つ。
 釘は、念入りにさしておかないといけない。


「大王。確かに、アンタの休日をどう使おうと、笑うも泣くもアンタの勝手ですよ。…けど」

 先ほど、鬼男を駆り立てたあの言葉は正論ではあるが正解ではない。

「けどね、アンタのせいで僕はアンタと過ごす以外じゃこの日を喜べない体になっちゃったんですから。そこは責任とってくださいね、アンタの一生分」


 年に二回、キッチリいちゃいちゃし尽くしてやるから覚悟しやがれ。
 目を見開いて一気に赤く染まった恋人ににっこり笑顔で言い放って、世界の全てから隔離すべく、布団というバリケードで二人を覆った。


(御望み通り思う存分、広い意味では同僚なアンタと親睦を深めあって差し上げますよ)

 まだまだ今日は、始まったばかり。
 まるで人事のように、あらゆる蓋が開く音を聞いた。


=========

デレ増し増し(当家比)
ふたりがぎゃーぎゃーやってれば私はそれが幸せ

タイトル悩んでたら当日に間に合わなかった…
(そしてこのタイトル)
(…この子の名付け親にだれかなってはくれませんか、いやもう本当に)

H22.7.16
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性別:
女性
自己紹介:
名:べに釦(べに ぼたん)
性:凹
血:B
誕:聖チョコ祭り前日

・本能のままに生きる20代の社会人(斜怪人?)
・基本的に人見知りチキン
・下手の横好きな文字書き。落描きもする
・マイナー/雑食/熱しにくいが火が点くと一瞬。そして永い
・ギャップもえ。基本的に受けっ子さん溺愛
・好きキャラをいじめ愛でるひねくれ者
・複数CPの絡むとかもう大好物。らぶ!
・設定フェチ。勝手に細かい裏設定を偽造して自家発電

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