♥ おちてきらめく１（七夕現パロ／文）

リアタイに投下した七夕ネタ（前編）

※現代パロ。社会人設定
※太＆閻いちゃこら仲良し…な妹太メイン（＋鬼閻風味）
※オニオン不在

続き～よりどうぞ！

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　まだまだ・全然・全く…と。
　落胆し、嘆いている時の方がきっと人って余裕がある。

　諦めが入っている分、少しだけ冷静でいられるから。


　もう・ちょっと・後少し…と。
　希望的姿勢で構えている方が、案外人って付け込まれやすい。

　期待ばかりが膨らんで、『もしも』という予防線がすっかり抜け落ちてしまうから。


　他人事みたいにぼんやり、そんな公式を結論づけながら。
　太子はずるずると目的地へと歩く。

　ずるりずるり。
　エネルギー切れの重い足をひきずり、折れた傘をひきずり、目には見えない未練を引きずり。
　あらゆる重みをずるずると、今にも倒れそうなぎりぎりのラインでひきずり歩いている。
　今から、とてもずるいことをするために。


『わたし太子さん、今オマエの家の前にいるの。』


　目的地であるのドアを前に。短縮1番で呼び出したアドレスに、一昔前の怪談みたいなメールを送り付けて。

「……何も言わず私といちゃいちゃラブラブしろ閻魔ぁああ！！」
「は？ちょ、うええっ？！」


　１分と置かず開かれたドアの向こう。慌てて出迎えに来た人物に向かって、太子は雄叫びをあげながら勢いよく飛びついた。



【おちてきらめく】




「……で、こんなずぶ濡れで突然口説きに来るなんて、一体全体どうしたの？」
「…………」
「太子ー？」


　飛びつかれた衝撃で地面に尻餅をついたままの閻魔が、首に巻き付きぴくりとも動かない太子に声をかける。

「玄関がフルオープンだよーご近所に密会ばれちゃうよ？太子ってば」

　名を呼びながら、開かれたままのドアを気にする仕種を見せるけれど。
　決して引きはがそうとはせず、あくまで太子を優先してくれる気遣い。

（だからつい、こうして甘えにきててしまうんだ…お前も私も、狡いなぁ）

　その優しさに押しだれるように。脳裏に吹き溜まった鬱憤が、ぽろりぽろりと太子の口から零れだした。


「……あの馬鹿が…」
「うん？」
「あのツナ馬鹿がっ…！」
「…ああ。そういえば今日だったっけ？小野くんが単身赴任から帰って来…」
「来れないんだってっ」
「は？」
「帰ってこないんだよ、アイツ！！」
「……どういうこと？」

　きいいと叫んだ太子は、首を傾げる閻魔に、事の経緯が書かれたメールを表示させた携帯を押し付けた。

「それが、あの馬鹿から来た最後のメールだ！！」


　昨晩届いた簡潔すぎるそのメールの送信者は、半年前、勤務上どうしても必要な研修とやらの為に単身、北の大地へ旅立ってしまった太子の恋人で。
　…本当なら今頃、とっくに一緒にいるハズだった相手でもある。

「…七日の朝一の便で、帰ってくるはずだったんだ。なのに……」

　七夕の逢瀬なんて雰囲気満点じゃないか！！
　…なんて、はしゃいでいた数日前の自分がうらめしい。


『明日なんですけど、局地的な暴風と大雨のせいで、もしかしたら飛行機が飛ばないかもしれません』

（なにそれ。なんだそれ）
（そこは気合いで飛べよ飛行機！！）

　久々の逢瀬をこの灰色の空に阻まれる。
　半年と一年の違いはあれど、何もそんなところまで忠実に七夕の二人と一緒だなんてあんまりだ。

　…しかもそれを直接電話するでもなく。
　たった一通のメール連絡で済ませてしまった妹子が、太子はなにより気に入らなかった。


「…それから全くの音沙汰無し。何度も電話をしているのに全然に出やがらないし……もう夕方だってのに…何なの？何だよ！ていうか何かもっと…言うことあっただろ？！」


　ろくに眠れずに、そわそわしながら迎えた朝。
　妹子が搭乗予定だった飛行機が相次いで欠航しているのをニュースで見て。
　昨日まで極限に最高潮だったテンションが、一気に最降下しマックス不機嫌と化したあの逆転劇の、不快さったら言葉に出来ない。

（どうしてくれるんだ、この私の行き場のない憤り…！）


「…というわけで結局、アイツが帰ってこない今があるんだよ…ああもうチクショー！！！私を弄びやがって！なんなのこの天気！そしてあのコンニャク芋！！」
「ちょ、太子落ち着いて…」
「これが落ち着いていられるかぁあ！！」
「あーどうどう！」
「動物扱いするな！」

→後編


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…私だけがとても楽しい聖魔のターンが文字数泥棒。
部下組が空気ですみません（笑）